走れムラマサ(3)<完>
(中略)
村正は金色の風のように走りました。まだ陽は沈みません。最後の死力を尽して、村正は走りました。ただ、わけのわからぬ大きな力にひきずられて走りました。陽は、ゆらゆら地平線に没し、まさに最後の一片の残光も、消えようとした時、村正は疾風の如く刑場に突入しました。間に合ったのです。
「待ちなさい。その人を殺してはなりません。村正が帰って来ました。約束のとおり、いま、帰って来ました」と大声で刑場の群衆にむかって叫んだつもりでありましたが、喉がつぶれて嗄れた声が幽かに出たばかり、群衆は、ひとりとして彼の到着に気がつきません。すでに磔の柱が高々と立てられ、縄を打たれたひしぎは、徐々に釣り上げられてゆきます。村正はそれを目撃して最後の勇、群衆を掻きわけ、掻きわけ、
「私です、刑吏! 殺されるのは、私です。彼を人質にした私は、ここにいます!」と、かすれた声で精一ぱいに叫びながら、ついに磔台に昇り、釣り上げられてゆく友の両足に、齧りつきました。群衆は、どよめきました。あっぱれ。ゆるせ、と口々にわめきました。
これで村正の目論見通り、信実とは決して空虚な妄想ではなかったことが王の心にも届くかと思われました。ところが、王の表情は微妙でした。
村正はおそるおそる、尋ねました。
「王よ、今もまだ、人を信ずることはできないでしょうか」
そうだねえ、と少し考えてから王は答えました。
「可愛がっていた子供が仲間を引き連れて帰ってきて、『オレ達はどんな未来が待っていようとも現在(いま)この瞬間(とき)をあがき続け己の生き様を貫き通す‥‥ただそれだけだ――‥!!』ってやってくれたら気が変わるかもしれないね」
「うーん、それだと今回は無理ですね。出直しましょう」
「……そうですね」
いままさに処刑されようとしていたはずのひしぎが、華麗な縄抜けを披露して磔台から降り立ちました。
「それでは一旦ここで解散ということで。ひしぎ、どうか吹雪をよろしくお願いします」
「村正……この設定だとあなたの妹婿と私は一切面識がないことになっているのですが……」
「おっと失敬、そうでした」
その後の王と壬生が果たしてどうなったのかは、また別のお話。 たたむ
村正は金色の風のように走りました。まだ陽は沈みません。最後の死力を尽して、村正は走りました。ただ、わけのわからぬ大きな力にひきずられて走りました。陽は、ゆらゆら地平線に没し、まさに最後の一片の残光も、消えようとした時、村正は疾風の如く刑場に突入しました。間に合ったのです。
「待ちなさい。その人を殺してはなりません。村正が帰って来ました。約束のとおり、いま、帰って来ました」と大声で刑場の群衆にむかって叫んだつもりでありましたが、喉がつぶれて嗄れた声が幽かに出たばかり、群衆は、ひとりとして彼の到着に気がつきません。すでに磔の柱が高々と立てられ、縄を打たれたひしぎは、徐々に釣り上げられてゆきます。村正はそれを目撃して最後の勇、群衆を掻きわけ、掻きわけ、
「私です、刑吏! 殺されるのは、私です。彼を人質にした私は、ここにいます!」と、かすれた声で精一ぱいに叫びながら、ついに磔台に昇り、釣り上げられてゆく友の両足に、齧りつきました。群衆は、どよめきました。あっぱれ。ゆるせ、と口々にわめきました。
これで村正の目論見通り、信実とは決して空虚な妄想ではなかったことが王の心にも届くかと思われました。ところが、王の表情は微妙でした。
村正はおそるおそる、尋ねました。
「王よ、今もまだ、人を信ずることはできないでしょうか」
そうだねえ、と少し考えてから王は答えました。
「可愛がっていた子供が仲間を引き連れて帰ってきて、『オレ達はどんな未来が待っていようとも現在(いま)この瞬間(とき)をあがき続け己の生き様を貫き通す‥‥ただそれだけだ――‥!!』ってやってくれたら気が変わるかもしれないね」
「うーん、それだと今回は無理ですね。出直しましょう」
「……そうですね」
いままさに処刑されようとしていたはずのひしぎが、華麗な縄抜けを披露して磔台から降り立ちました。
「それでは一旦ここで解散ということで。ひしぎ、どうか吹雪をよろしくお願いします」
「村正……この設定だとあなたの妹婿と私は一切面識がないことになっているのですが……」
「おっと失敬、そうでした」
その後の王と壬生が果たしてどうなったのかは、また別のお話。 たたむ
走れムラマサ(2)
村正はその夜、一睡もせず十里の路を急ぎに急いで、村へ到着したのは、翌(あく)る日の午前、陽は既に高く昇って、村人たちは野に出て仕事をはじめていました。村正の十六の妹も、きょうは兄の代りに羊群の番をしていました。よろめいて歩いて来る兄の、疲労困憊の姿を見つけて驚きました。そうして、兄に質問を浴びせました。
「なんでもありません」村正は無理に笑おうと努めました。「市に用事を残して来たんです。またすぐ市に行かなければなりません。あす、姫時の結婚式を挙げます。早いほうがいいでしょう」
妹は頬をあからめました。
「綺麗な衣裳も買って来ましたよ。さあ、これから行って、村の人たちに知らせて来ましょう。結婚式は、あすだと」
村正は、また、よろよろと歩き出し、家へ帰って神々の祭壇を飾り、祝宴の席を調え、間もなく床に倒れ伏し、呼吸もせぬくらいの深い眠りに落ちてしまいました。
眼が覚めたのは夜でした。村正は起きてすぐ、花婿の家を訪れました。そうして、少し事情があるから、結婚式を明日にしてもらえませんか、と頼みました。婿の牧人であるところの吹雪は驚き、それは受け入れられない、こちらには未だ何の仕度も出来ていない、葡萄の季節まで待ってくれ、と答えました。村正は、待つことは出来ません、どうか明日にしてください、と更に押してたのみました。婿も頑強でありました。なかなか承諾してくれません。夜明けまで議論をつづけて、やっと、どうにか婿をなだめ、すかして、説き伏せました。結婚式は、真昼に行われました。祝宴に列席していた村人たちは、陽気に歌をうたい、手を拍(う)ちました。村正も、満面に喜色を湛え、しばらくは、王とのあの約束をさえ忘れていました。祝宴は、夜に入っていよいよ乱れ華やかになりました。村正は、一生このままここにいたい、この佳い人たちと生涯暮して行きたいと願いましたが、わが身に鞭打ち、ついに出発を決意しました。歓喜に酔っているらしい花嫁に近寄り、
「おめでとう。私は疲れてしまったから、ちょっと眠ります。眼が覚めたら、すぐに市に出かけてきますね。大切な用事があるのです。私がいなくても、もうあなたには吹雪がいるのだから、決して寂しい事はありません」
花嫁は、夢見心地で首肯(うなず)きました。村正は、それから花婿の肩をたたいて、
「仕度の無いのはお互さまですよ。私の家にも、宝といっては、妹と羊だけです。もう一つ、私の弟になったことも誇ってくれるといいのですが」
花婿は少しだけ、照れているようでした。そして、出かけるときに持っていけ、と自分の肩布を村正にかけてくれました。
「必死に走りすぎて全裸にならないように気をつけろ」
「……そういうメタ発言やめましょうよ吹雪」
それから村正は笑って村人たちにも会釈して、宴席から立ち去り、羊小屋にもぐり込んで、死んだように深く眠りました。(つづく) たたむ
「なんでもありません」村正は無理に笑おうと努めました。「市に用事を残して来たんです。またすぐ市に行かなければなりません。あす、姫時の結婚式を挙げます。早いほうがいいでしょう」
妹は頬をあからめました。
「綺麗な衣裳も買って来ましたよ。さあ、これから行って、村の人たちに知らせて来ましょう。結婚式は、あすだと」
村正は、また、よろよろと歩き出し、家へ帰って神々の祭壇を飾り、祝宴の席を調え、間もなく床に倒れ伏し、呼吸もせぬくらいの深い眠りに落ちてしまいました。
眼が覚めたのは夜でした。村正は起きてすぐ、花婿の家を訪れました。そうして、少し事情があるから、結婚式を明日にしてもらえませんか、と頼みました。婿の牧人であるところの吹雪は驚き、それは受け入れられない、こちらには未だ何の仕度も出来ていない、葡萄の季節まで待ってくれ、と答えました。村正は、待つことは出来ません、どうか明日にしてください、と更に押してたのみました。婿も頑強でありました。なかなか承諾してくれません。夜明けまで議論をつづけて、やっと、どうにか婿をなだめ、すかして、説き伏せました。結婚式は、真昼に行われました。祝宴に列席していた村人たちは、陽気に歌をうたい、手を拍(う)ちました。村正も、満面に喜色を湛え、しばらくは、王とのあの約束をさえ忘れていました。祝宴は、夜に入っていよいよ乱れ華やかになりました。村正は、一生このままここにいたい、この佳い人たちと生涯暮して行きたいと願いましたが、わが身に鞭打ち、ついに出発を決意しました。歓喜に酔っているらしい花嫁に近寄り、
「おめでとう。私は疲れてしまったから、ちょっと眠ります。眼が覚めたら、すぐに市に出かけてきますね。大切な用事があるのです。私がいなくても、もうあなたには吹雪がいるのだから、決して寂しい事はありません」
花嫁は、夢見心地で首肯(うなず)きました。村正は、それから花婿の肩をたたいて、
「仕度の無いのはお互さまですよ。私の家にも、宝といっては、妹と羊だけです。もう一つ、私の弟になったことも誇ってくれるといいのですが」
花婿は少しだけ、照れているようでした。そして、出かけるときに持っていけ、と自分の肩布を村正にかけてくれました。
「必死に走りすぎて全裸にならないように気をつけろ」
「……そういうメタ発言やめましょうよ吹雪」
それから村正は笑って村人たちにも会釈して、宴席から立ち去り、羊小屋にもぐり込んで、死んだように深く眠りました。(つづく) たたむ
走れムラマサ(1)
村正は激怒しました。必ず、かの邪智暴虐の王を除かなければならぬと決意しました。村正には政治がわかりません。本当はわかるのですがこの設定ではわかりません。村正は牧人です。笛を吹き、羊と遊んで暮して来ました。けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感でありました。
きょう未明、彼は村を出発し、野を越え山越え、十里はなれたこの壬生にやって来ました。村正には父も、母もありません。十六の、内気な妹と二人暮しです。この妹は、或る律気な一牧人を、近々、花婿として迎える事になっていました。村正は、それゆえ、花嫁の衣裳やら祝宴の御馳走やらを買いに、はるばる市にやって来たのでした。先ず、その品々を買い集め、それから都の大路をぶらぶら歩きました。村正には竹馬の友がありました。今はこの壬生の市で、悪魔の眼の能力を生かして石工をしています。その友を、これから訪ねてみるつもりなのです。歩いているうちに村正は、まちの様子を怪しく思いました。ひっそりしているのです。もう既に日も落ちて、まちの暗いのは当りまえなのですが、けれども、なんだか、夜のせいばかりでは無く、市全体が、やけに寂しいのです。ノーテンキと評されたことのある村正も、だんだん不安になって来ました。路で逢った若い衆をつかまえて、何かあったのですか、二年まえに来たときは、夜でも皆が歌をうたって、まちは賑やかであった筈ですが、と質問しました。若い衆は、首を振って答えませんでした。しばらく歩いて老爺に逢い、こんどはもっと、語勢を強くして質問を重ねました。老爺は、あたりをはばかる低声で、わずか答えました。
「王様は、人を殺します」
「なぜ殺すのです」
「人を、信ずる事が出来ぬ、というのです。人は倖せを望み続け、欲望が満たされなければ他人の倖せさえ奪う、醜い存在だと。そんな汚れた世界は無に帰すべきだと」
聞いて、村正は激怒しました。「呆れた王です。生かして置けません」
(中略)
竹馬の友、ひしぎは、深夜、王城に召されました。暴君の面前で、佳き友と佳き友は、二年ぶりで相逢うたのです。村正は、三日間の猶予のため身代りになってほしいと、友に一切の事情を語りました。ひしぎは首肯(うなず)き、
「私が処刑される側なんですね? する側じゃなく?」
「そういう原作準拠発言はほどほどにねひしぎ」
ともあれ、 友と友の間は、それだけでよかったのです。ひしぎは縄打たれ、村正はすぐに出発しました。初夏、満天の星でありました。(つづく) たたむ
きょう未明、彼は村を出発し、野を越え山越え、十里はなれたこの壬生にやって来ました。村正には父も、母もありません。十六の、内気な妹と二人暮しです。この妹は、或る律気な一牧人を、近々、花婿として迎える事になっていました。村正は、それゆえ、花嫁の衣裳やら祝宴の御馳走やらを買いに、はるばる市にやって来たのでした。先ず、その品々を買い集め、それから都の大路をぶらぶら歩きました。村正には竹馬の友がありました。今はこの壬生の市で、悪魔の眼の能力を生かして石工をしています。その友を、これから訪ねてみるつもりなのです。歩いているうちに村正は、まちの様子を怪しく思いました。ひっそりしているのです。もう既に日も落ちて、まちの暗いのは当りまえなのですが、けれども、なんだか、夜のせいばかりでは無く、市全体が、やけに寂しいのです。ノーテンキと評されたことのある村正も、だんだん不安になって来ました。路で逢った若い衆をつかまえて、何かあったのですか、二年まえに来たときは、夜でも皆が歌をうたって、まちは賑やかであった筈ですが、と質問しました。若い衆は、首を振って答えませんでした。しばらく歩いて老爺に逢い、こんどはもっと、語勢を強くして質問を重ねました。老爺は、あたりをはばかる低声で、わずか答えました。
「王様は、人を殺します」
「なぜ殺すのです」
「人を、信ずる事が出来ぬ、というのです。人は倖せを望み続け、欲望が満たされなければ他人の倖せさえ奪う、醜い存在だと。そんな汚れた世界は無に帰すべきだと」
聞いて、村正は激怒しました。「呆れた王です。生かして置けません」
(中略)
竹馬の友、ひしぎは、深夜、王城に召されました。暴君の面前で、佳き友と佳き友は、二年ぶりで相逢うたのです。村正は、三日間の猶予のため身代りになってほしいと、友に一切の事情を語りました。ひしぎは首肯(うなず)き、
「私が処刑される側なんですね? する側じゃなく?」
「そういう原作準拠発言はほどほどにねひしぎ」
ともあれ、 友と友の間は、それだけでよかったのです。ひしぎは縄打たれ、村正はすぐに出発しました。初夏、満天の星でありました。(つづく) たたむ
2009年10月(冬コミ落選時)の小ネタ再録
にゃんこ一族はひしぎと吹雪の二人サークルです。甲斐・駿河の地元イベント中心に活動しています。ときどき江戸や大阪に遠征もします。ジャンルは当然ペットです。吹雪が文章担当、ひしぎが絵の担当です。吹雪の猫エッセイにひしぎが挿し絵入れたり実録漫画にしたりという具合です。
相方のひしぎは図鑑かよ!というくらいリアルな細密画しか描けないのですが実は吹雪はそれがちょっびり不満です。もっとファンシーで可愛い感じの絵柄がいいのです。でも「もっと可愛らしく描け」と試しに言ってみたところそのリクエストにこたえようとしたひしぎの芸術が爆発してしまった前例があるのでもう半分諦めています。
(プリクラがあるあの世界に同人誌即売会があってもさして驚かない…)
相方のひしぎは図鑑かよ!というくらいリアルな細密画しか描けないのですが実は吹雪はそれがちょっびり不満です。もっとファンシーで可愛い感じの絵柄がいいのです。でも「もっと可愛らしく描け」と試しに言ってみたところそのリクエストにこたえようとしたひしぎの芸術が爆発してしまった前例があるのでもう半分諦めています。
(プリクラがあるあの世界に同人誌即売会があってもさして驚かない…)
2008年12月の小ネタ再録 けんじゃのおくりもの
とある年末。太四老ひしぎは、日ごろ世話になっている友だちの吹雪に早めのお歳暮を贈ろうと考えました。そしてそのころ太四老吹雪も、友だちのひしぎに対して同じことを考えていました。しかし、私財をなげうって壬生につくしてきた彼らには、実は自由になるお金があまりありませんでした。
そこで、ひしぎは先代からもらった舶来の懐中時計(今調べたら懐中時計の発明は1675年らしいがそこは気にしない)を売りはらって、吹雪のために特注の櫛を買うことにしました。
一方そのころ吹雪は、ひしぎの金時計につける鎖を買うために自分の髪をばっさり切って売っt
(相手のことを思いやるあまりにうまくいかなくなっちゃう感じがこの二人に合ってるかなーと思って考えたんだけどやっぱ無理だったよ…)
そこで、ひしぎは先代からもらった舶来の懐中時計(今調べたら懐中時計の発明は1675年らしいがそこは気にしない)を売りはらって、吹雪のために特注の櫛を買うことにしました。
一方そのころ吹雪は、ひしぎの金時計につける鎖を買うために自分の髪をばっさり切って売っt
(相手のことを思いやるあまりにうまくいかなくなっちゃう感じがこの二人に合ってるかなーと思って考えたんだけどやっぱ無理だったよ…)
2008年1月の小ネタ再録
原作にもあった実験道具に八つ当たりしている場面を、ある日ひしぎは吹雪に見られてしまいます。しかしひしぎとしては荒れてるところは吹雪には見せたくなかったので(自分のせいでひしぎが苦しんでいるのではないかとか吹雪が的外れなことを気にしてしまうからです)、その場はなんでもないとごまかします。しかし今度は積み上げた瓦を吹雪がチョップで叩き割っているところをひしぎが目撃してしまうのです。
なんとなく気まずい雰囲気が流れ、たっぷりした沈黙ののちにひしぎがもっと明るいやりかたで鬱憤を晴らしましょうと言い出します。
太四老権限的なものを行使して陰陽殿でいちばん長い廊下を封鎖し、大の男二人が黙々とドミノを並べます。ひたすら並べます。途中で蛇行させたり柱の周りを回ったりしながら長い長い列を並べます。ひたすら並べます。そして、お前がやれいえ吹雪がしてくださいの攻防の末、折れた吹雪が最初の一枚を倒します。
一大スペクタクルな感じでそれは見事に全部倒れたドミノを再び黙々と片付け、二人はほんのちょっとだけ微笑みあってまたそれぞれの仕事に戻るのです。
なんとなく気まずい雰囲気が流れ、たっぷりした沈黙ののちにひしぎがもっと明るいやりかたで鬱憤を晴らしましょうと言い出します。
太四老権限的なものを行使して陰陽殿でいちばん長い廊下を封鎖し、大の男二人が黙々とドミノを並べます。ひたすら並べます。途中で蛇行させたり柱の周りを回ったりしながら長い長い列を並べます。ひたすら並べます。そして、お前がやれいえ吹雪がしてくださいの攻防の末、折れた吹雪が最初の一枚を倒します。
一大スペクタクルな感じでそれは見事に全部倒れたドミノを再び黙々と片付け、二人はほんのちょっとだけ微笑みあってまたそれぞれの仕事に戻るのです。